![]() 9К720 "Искандер" | |
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![]() 「イスカンデルM」ミサイルを搭載した輸送起立発射機 MZKT-7930 | |
種類 |
短距離弾道ミサイル(イスカンデルE/M) 巡航ミサイル(イスカンデルK) |
運用史 | |
配備期間 | 2006年から[1] |
配備先 |
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開発史 | |
製造業者 |
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諸元 | |
重量 | 3,800 kg[2] |
全長 | 7,200 mm |
直径 | 950 mm |
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ペイロード | 480 kg [2] |
最大射程 |
イスカンデルM:400 km(推定) イスカンデルE:280 km イスカンデルK:500 km |
精度 | 5 - 7 m(イスカンデルM) |
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エンジン | 単段固体燃料推進式 |
誘導方式 |
慣性誘導(イスカンデルE) 慣性誘導 + E/O(イスカンデルM) |
9K720「イスカンデル」(ロシア語:9К720 "Искандер"ヂェーヴャチ・カー・セミソート・ドヴァーッツァチ・イスカンデール)はロシア製の短距離弾道ミサイル(SRBM)。固体燃料推進で、車両に搭載される移動式の戦域弾道ミサイル複合(TBM、Оперативно-тактический ракетный комплекс、ОТРК)である。北大西洋条約機構(NATO)の用いたNATOコードネームでは、“SS-26 Stone(「石」の意)”と呼ばれる。「イスカンデル」とは古代マケドニアの英雄アレクサンドロス大王の異称である。
「イスカンデル」は戦域レベルの紛争用に設計された戦術ミサイルシステムである[3]。ポイントやエリアの標的、例えば敵火力兵器、防空・対ミサイル防衛兵器、司令所や通信ノード、密集地帯の軍隊などに合わせて通常弾頭を使い分けることで、活動中の軍部隊・標的の両方を破壊することにより敵軍の戦闘遂行能力を弱体化させる。このシステムは敵の活動妨害環境の中でも高い確率で任務を遂行することができ、ミサイルの発射準備中や飛行中でもほとんど故障しない。ミサイル飛行経路の計算と入力は、発射装置が自動で行う。システム搭載車両は移動可能で、耐用年数の延長や操作の容易さも相まって、高いレベルの戦術的作戦能力および戦略的機動性を有している。
「イスカンデル」にはクラスター爆弾弾頭、燃料気化爆弾弾頭、威力増大型弾頭、バンカーバスター用の地中貫通弾頭、対レーダー作戦用の電磁パルス弾頭など、いくつかの異なるタイプの通常弾頭が用意されている[4][1]。
製造企業であるロステック会長セルゲイ・チェメゾフは、国内仕様には核弾頭搭載能力が備わることを明言している[5]。
ソ連では、1960年代に大量配備した戦域弾道ミサイル複合9K72「エリブルース」の代替として1980年代初頭より 9K714「オカー」を配備していた。これが1987年のINF条約により制限対象となったため、条約に抵触しない別の代替ミサイルが必要となった。1989年にはより射程の短い9K79-1「トーチカU」が実用化されたが、9K714を代替するためには長射程の非核弾頭型ミサイルが必要であった。
新しい戦域弾道ミサイル複合は9K720と名付けられ、9K79や9K714の開発で知られるコロムナ機械製作設計局(KBM)によって開発が主導された。ミサイル発射装置はヴォルゴグラードの中央設計局「チターン」、自動誘導装置はモスクワの自動化技術・水理学中央科学研究所が受け持った。開発条件としては、特に核弾頭を搭載できないようにすること、その分命中精度を高めること、自動誘導装置を改良することなどが挙げられた。
ミサイルの開発はソビエト連邦の崩壊を経ても継続され、1996年には「イスカンデル」ミサイル[6]の最初の発射がロシアのテレビで放送された。 西側では1999年にこのシステムがロシア軍で運用段階に入ったと見ていたが、後に時期尚早だったことがわかった[1]。
2004年9月、ロシア国防省高官らの会合で当時のプーチン大統領に2005年度の防衛予算の草案が報告され、セルゲイ・イワノフ国防相は新しい戦術ミサイルシステム「イスカンデル」の状態テストの完了について発言。2005年にこのシステムの大量生産に入り、年度末頃にはこの兵器を備えた部隊ができているだろうと話した[1]。
2005年3月、ロシア防衛産業の情報筋はインテルファクスAVNに既存の「イスカンデルE」戦術ミサイルシステムに基づいた500 - 600kmの範囲への新しいミサイルの開発が可能であると話した。しかしながら、彼はそれには「最大で5、6年かかるかもしれない」と話した[1]。
2006年には「イスカンデルM」戦域弾道ミサイル複合の量産が開始された。「イスカンデルM」は「イスカンデル」のロシア連邦軍向けの派生型で、最大500 kmの射程と480 kgの弾頭を持っている[1]。
2007年には新しいミサイルシステム(発射装置も)であるR-500「イスカンデルK」[7]巡航ミサイルの発射試験が行われた[8]。
2008年11月、ロシアのメドヴェージェフ大統領は大統領就任後初となる年次教書演説で、NATOミサイル防衛システムを中和するために、もし必要なら、ロシアはNATO加盟国であるリトアニアとポーランドの間にあるロシア最西端の飛地カリーニングラード州に「イスカンデル」複合を配備するだろうと述べた[9]。リトアニア政府は、少なくとも軍事演習時にはイスカンデルがカリーニングラードに持ち込まれており、最大射程が700kmに延伸された改良型はドイツのベルリン付近まで攻撃可能との見解を公表している[10]。
「イスカンデル」の使用するミサイルは、前任の9K714の使用する9M714ミサイルよりも優れている。「イスカンデルM」システムは2つの固体推進燃料単段式誘導ミサイル、モデル9M723K1を備えている。各々は全飛行経路中ずっと制御されていて、分離しないタイプの弾頭を備えている。発射台輸送車両に備えられた各々のミサイルは独自に、ものの数秒の間に標的を狙うことができる。「イスカンデル」発射砲座の機動性はミサイル発射の妨害を困難にする[4]。
ミサイル運搬車輛には、ベラルーシの国営企業ミンスク・ホイール・トラクター工場製のMZKT-7930と、ロシア・ブリャンスク自動車工場製のBAZ-6909が使用できる。これらの車輛は、従来の9K79や9K714が各車輛ごとに1発のミサイルしか搭載できなかったのに対し、2 発のミサイルを搭載できるようになっている。
「イスカンデル」は精度、射程、信頼性(敵の防衛を回避する能力)を獲得している。それは優秀な戦闘機や防空に直面し、空軍の爆撃や巡航ミサイルの発射任務があまり期待できない時に精密爆撃の代替手段をなしている。衛星や航空機だけではなく、従来の諜報センター、または発射を指示する兵士も標的を見つけることができる。コンピュータースキャンされた航空写真から見つけることもできる。標的の移動に合わせて飛行中のミサイルの狙いを修正することもできる[4]。「イスカンデルM」(Eではない)は光学式誘導弾頭で、AWACSやUAVからの暗号化された無線通信によっても制御できる。電子光学誘導システムは自律追尾能を与える。ミサイルに内蔵されたコンピューターは標的の画像を受信し、標的に自動的に照準を合わせて追尾し、超音速で標的に向かって降下する。
飛行中、ミサイルは弾道ミサイルより低い軌道を取り、飛行最終段階には回避行動を行い、ミサイル防衛システムをかいくぐるために電子妨害と赤外線センサの幻惑を行う9B899デコイ弾を放出する[11]。このミサイルは決して大気圏を離れることはなく、比較的平坦な軌道を取る。
2018年2月8日の軍事パレードで公開したKN-23新型短距離弾道ミサイルについて、38ノースは「イスカンデルを土台に開発された」と分析している[23]。専門家や韓国軍によれば、2019年5月4日、同月9日、7月25日、8月6日に発射されたミサイルとみられる飛翔体は、イスカンデルをもとにしているとも[24][25][26]飛行特性が似ているともされる[27]。2024年、ウクライナに着弾した北朝鮮製ミサイルは、9K720に類似するものの配線や直径が10mm異なる特徴を有していたと報じられたが[28]、9K720には施されている対電子戦防護がなされていないなどの差異が見られた[11]。なお、その後の調査で直径については9K720より15cm大きい1.1mであることが判明している[29]。
全ての「イスカンデル」複合を含む[30]
このシステムはポイントやエリアに合わせて通常弾頭を使い分けることになっている