M-ATV MRAP All Terrain Vehicle | |
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M-ATV, アメリカ海兵隊, 2011年 | |
種類 | 4x4 MRAP |
原開発国 | アメリカ合衆国 |
運用史 | |
配備期間 | 2009年~ |
配備先 | アメリカ軍、他 |
関連戦争・紛争 | アフガニスタン紛争、他 |
開発史 | |
開発者 | オシュコシュ/プラサン |
製造業者 | オシュコシュ |
製造期間 | 2009年~ |
製造数 | 約10,000両[1] |
諸元 | |
重量 |
12.5 t (車体重量) 14.7 t (全備重量) |
全長 | 6.27 m |
全幅 | 2.49 m |
全高 | 2.70 m |
要員数 | 5名(4名+銃手) |
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装甲 |
V字型車体 プラサン社製複合装甲 |
主兵装 |
M2重機関銃又はM240機関銃 OGPK又はM153 CROWS IIに搭載 |
エンジン | キャタピラー C7 7,200cc 6気筒ターボチャージャー付きディーゼル |
変速機 | アリソン 3500SP 6速オートマチック |
懸架・駆動 |
ダブルウィッシュボーン式 4×4輪駆動 |
行動距離 | 510 km |
速度 | 105km/h |
M-ATV(MRAP All Terrain Vehicle)は、アメリカ合衆国のオシュコシュ社で開発された4×4輪駆動の耐地雷/伏撃防護装甲車(Mine Resistant Ambush Protected, MRAP)である。
従来の、大柄で重量のあるMRAPの車種と同等の防御力を持ちながら、より高い機動性を求めて計画された"MRAP All Terrain Vehicle"プログラムに応じて開発された車種で、M1114やM1151などの装甲型ハンヴィーの後継となることが意図されている[2]。"MRAP All Terrain Vehicle"を日本語にすると、"耐地雷/伏撃防護,全地形対応車"というような意味になる。
2008年夏頃、アメリカ国防総省はアフガニスタンの厳しい地形に対応できる、より機動性を重視したMRAPの検討を始めた。開示された概略要求仕様に対し、提示期限の8月21日までに20社を超えるメーカーから提案が出された。2008年12月には正式な要求仕様が決定した。この当時のM-ATVプログラムの予定調達数は、最低372両から最大10,000両の間とされており、おそらく2,080両になるとのことであった[3]。
2009年3月には5社から提案された6種類の車種から候補を絞り込むための2ヶ月に及ぶアメリカ陸軍での試験が開始された。この試験に持ち込まれた車種は
の6種類であった[4]。
2009年5月にRG-31が脱落した後、残りの5種に対して3両ずつテスト用車両を納品するよう要求が出され、引き続き評価が行われた。そして2009年6月30日に、オシュコシュ社の提案した車両が選定されたと伝えられた[5][6][7]。MRAP計画を統括するアメリカ海兵隊のブロガン准将は、オシュコシュ製M-ATVが選定された理由として、生存性が最も高いと評価されたこと、オシュコシュ社の技術力と生産能力が評価されたこと、一方で車両単価は2番目に低価格だったことを挙げた[8][9][10]。
初回の量産発注では、約10億USドルの予算で2,244両のM-ATVが注文された。その後調達数は5,244両にまで増やされた。内訳はアメリカ陸軍向けが2,598両、海兵隊向けが1,565両、特殊作戦軍(SOCOM)向け643両、空軍向け280両、海軍向け65両、そしてテスト用車両が93両であった[11]。
2009年7月には最初の量産車46両がオシュコシュ社より納品され、10月には最初の車両がアフガニスタンに到着した。11月には納品数が1,000両以上となった。オシュコシュ社は国防総省との契約で月産1,000両の生産能力を要求されていたが、12月には本拠地であるウィスコンシン州オシュコシュと、ペンシルベニア州マッコネルズバーグでの分散生産体制により、その生産能力を獲得していた[12]。2010年3月には、オシュコシュ社から初回発注分が完納された。その後も追加調達が行われ、総計8,722両のM-ATVがアフガニスタンで活動する陸軍、海兵隊、SOCOM、空軍に供給された。
アフガニスタンでの大規模な作戦終了後、アメリカ政府は調達されたM-ATVの約8割、およそ7,000両を維持することを決定した。約5,400両が陸軍、250両がSOCOM、1,350両が海兵隊その他の保有分となる。これらの車両の一部はオシュコシュ社によって改修を受けることとなり、2014年8月から順次改修が行われている。内容は、既生産車の最終量産パッチ相当への改修、車体下部追加装甲(Underbody Improvement Kit, UIK)の装着、改良された自動消火システム(Automatic Fire Extinguishing System, AFES)の搭載などである。
オシュコシュ社では2013年に、同社で開発した無人自動車"テラマックス"のシステムをM-ATVに搭載する計画も発表している。この改修によりM-ATVが無人地上車両(UGV)となり、工兵部隊での対IED任務や危険地域での移動経路確保任務などへ利用可能であると提案されている[13]。
また2015年2月には、M-ATVにM230 30mm機関砲をRWSを介して搭載し、射撃するデモンストレーションが行われた。
2015年8月25日には、アメリカ軍の進める次期軍用車両の調達・配備計画である"JLTV"(Joint Light Tactical Vehicle, 統合軽戦術車両)計画の車種に、オシュコシュ社のL-ATVが選定された。JLTVは現在アメリカ軍で広く使用されているハンヴィーシリーズ全体の後継車種になることを目的としており、第一弾の契約では約67.5億ドルの予算で17,000両のL-ATVが導入される予定で、最終的には53,582両が総額535億ドルで調達される大型契約となる予定である[14][15]。このL-ATVは、M-ATVの実戦での運用評価に基づいて開発された兄弟車両で、重量はM-ATVの2/3程度と軽く、より機動性の高い汎用車両である。
2023年9月のロシア軍のウクライナ進行の中で、最激戦地ザポリージャ州ロボティーンの攻防でウクライナ軍は、米軍供与のM-ATVでロシア軍が敷設した対戦車地雷を踏んでしまい大きな爆発を起こすも、乗員は全員無事であった。