JLTV
Joint Light Tactical Vehicle
JLTVに選定されたL-ATV
種類 汎用軍用車両
原開発国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
運用史
配備期間 2018年~
配備先 アメリカ軍
開発史
開発者 オシュコシュ・コーポレーション(L-ATV)
AMゼネラル(BRV-O)
ロッキード・マーティン
製造業者 オシュコシュ・コーポレーション(L-ATV)
製造数 53,582両(予定)
諸元
要員数 4名(CTV)
2名(CSV)

装甲 耐地雷、耐爆発物防護(要求仕様)
懸架・駆動 4×4輪駆動
行動距離 480 km(要求仕様)
速度 110km/h(要求仕様)
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JLTV(Joint Light Tactical Vehicle, 統合軽戦術車両)は、アメリカ軍陸軍海兵隊特殊作戦軍)によって進められている、汎用軍用車両"ハンヴィー"(HMMWV, High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle, 高機動多用途装輪車両)シリーズの後継車種の選定プログラムの名称、およびその後継車両そのものを指す名称である[1]

従来のハンヴィーシリーズに比較し、同等以上の機動性、より大きい積載容量、より強固な地雷IEDに対する防御力が要求されている。

2015年8月25日、各種運用評価の結果、オシュコシュ・コーポレーション社の提案していたL-ATV(Light Combat Tactical All-Terrain Vehicle)が選定されたと伝えられた。JLTVは2018年頃より量産配備が開始され、最終的には総計53,582両が総額535億USドルで調達される大型契約となる予定である[2][3]

背景

アメリカ軍で広く使用されている汎用軍用車両"ハンヴィー"は、それまで使用されていたM151(Military Utility Tactical Truck:MUTT、マット、別名"ケネディジープ")の後継として1979年に開発が開始され、1985年に量産配備が開始された。ハンヴィーはアメリカ軍だけでなく各国に輸出され、総計約28万両が生産され、現在も各国で現役で使用されている。しかしながらハンヴィーの開発された冷戦時代には、現在の戦場でみられるIED地雷を用いる、いわゆる低強度紛争非対称戦争は、開発や運用を行うメーカーや軍にとって、重要なファクターでは無かった。

2003年のイラク戦争後の駐留期間や、2001年以降のアフガニスタン紛争への介入では、ハンヴィーが前述のIEDのような新たな脅威に対し脆弱である事が判明した。こういった状況に対し、装甲化ハンヴィーの戦場への投入や、機関銃手の防護キット(OGPK)、あるいは遠隔式銃塔(M153 CROWS II)の追加装着、MRAPと呼ばれる耐地雷装甲車の急速な開発・調達・部隊配備が行われたが、JLTV計画もこういった状況に対する対策の一つであり、より高い防御力、生存性を持つ車両をハンヴィーの後継車種として調達するという計画である。

また、MRAPは地雷への防御力が高い反面、車体重量が重く、CH-47CH-53での空輸が困難であるという問題があった。このためJLTVには、爆発物に対する防御能力と、空輸可能な車両重量という、互いに相反する性能を求められる事になった。

JLTV計画は当初、アメリカ軍のハンヴィーの任務を完全に置き換える事を目的としてスタートしたが、現在では、アメリカ国防総省の公式見解として、全てのハンヴィーをJLTVに更新する予定では無い、とされている[4]

概要

開発計画の経緯

JLTV計画は2005年にスタートし、2006年1月に概略要求仕様と共にその存在が公になった。2006年11月にJLTV計画は正式に承認された。

2008年2月5日にTDフェイズ(Technology Development phase, 基礎技術開発フェイズ)が開始された。提案の提示要求が国防総省より公開され、メーカーからの提案が募集された。この時点でのJLTV計画への参入表明は、

初期JTLV計画への提案車両
数種類のJLTV試作車

といった、いずれも複数企業による共同提案であった。

2008年10月、国防総省はロッキード・マーティンBAE システムズ・ランド・アンド・アーマメンツジェネラル・ダイナミクスAMゼネラルBAEシステムズナビスター・インターナショナルの3提案を承認し、選定の次ステップに進ませた。ノースロップ・グラマンオシュコシュはこの決定に異議を申し立てたが、2009年2月に却下された[14]

2010年6月、提案の通った3社(3グループ)は7両のJLTV試作車を評価試験の為納品した。同じ月、アメリカ陸軍は軍用車両調達戦略の変更により、JLTV計画への協力の比重を減らす事にした[15][16]。とはいえ、この時点でも陸軍は、JLTVをハンヴィーの後継および補完機種にする方針は変えていなかった[16][17]

3社の試作車両による評価試験、TDフェイズは2011年3月に終了した。しかし前月の時点で、次の評価ステップであるEMDフェイズ(Engineering and Manufacturing Development phase, 生産技術開発フェイズ)の開始は予定より遅れ、2012年の1月か2月になるだろうと発表されていた。理由は、アメリカ陸軍のJLTVに対する要求仕様が変更され、"M-ATVと同等レベルの車体底部の防御力"の要求が加わったためであった。

選定がEMDフェイズに移る前に、他の要求仕様の更新も行われた。これまでのJLTVの要求仕様書では、積載重量がカテゴリーA,B,Cの三段階に分けられていた。具体的には、

JLTV積載容量カテゴリ(仕様変更前)
積載重量 1,600kg。
積載重量 1,800~2,200kg
積載重量 2,300kg。

のような要求仕様であったが、これらのカテゴリーが整理され、2段階の要求となった。変更後の積載重量カテゴリーは

乗員4名、積載重量 1,600kg
乗員2名、積載重量 2,300kg

となった[18]。この理由は、元の分類のカテゴリーBの車両重量が約7トンを超え、陸軍のCH-47Fおよび海兵隊のCH-53Kでの空輸が困難になる事が懸念されたためである。改定後の仕様ではこれら2種類の積載重量に対し、それぞれ異なるミッションパッケージの要求があり、計6種類の要求となっていた。

EMDフェイズの要求仕様書の暫定版は2011年10月に公開された。この仕様書でのJLTVの1台あたりのユニットコストは23万~27万USドルとされていた。走行パッケージのコストは6.5万USドル程度が求められていた。また、生産段階で装甲重量と機動性のどちらかに比重をおいた仕様変更が容易に出来る事も要求されていた。

この頃、JLTV計画は予算の増大や計画の遅れを問題視され、大幅な予算カットあるいは全面的なキャンセルあるいは休止の危機にあった。また、2011年8月に暫定仕様が策定されたハンヴィーの近代化改修・積載容量拡張プログラム(HMMWV Modernized Expanded Capacity Vehicle, ハンヴィーMECV)との競合も懸念されていた。

2012年1月26日、JLTVのEMDフェイズの提案募集要求が開示された。同日発表された2013年度の予算案によれば、JLTVへの資金的・技術的リソースを考慮し、ハンヴィーMECV計画は一旦休止される事となった。

2012年3月後半、EMDフェイズへの提案が締め切られ、入札業者は少なくとも6社は明らかになっていた[19]。2012年9月には最後の7番目の入札者,"ハードワイヤ・アーマード・システムズ LCC"が明らかとなった。この7社(7提案)は、

であった。

2012年8月23日、陸軍および海兵隊はEMDフェイズでの審査により、ロッキード・マーティン JLTV英語版AMゼネラルBRV-O英語版)、オシュコシュL-ATVの3車種を合格とした。3社はそれぞれ22両ずつの試作車を製造し、国防総省に納品する事となった。

2013年6月には、ロッキード社が評価試験に必要な22両の製造を完了した。8月末にはオシュコシュ社のL-ATV、AMゼネラル社のRBV-Oも出来上がり、陸軍と海兵隊は合計66両のテスト用試作車が揃ったと声明を出した。3社はそれぞれ22両の試作車両をメリーランド州アバディーン性能試験場、およびアリゾナ州ユマ性能試験場英語版に持ち込んだ。試験場では各車両に対し、爆発物の破片や爆風への耐久力試験、走行試験など種々の運用評価試験が約1年に渡って行われた。この後、2015年7月に勝ち残った1社が選ばれ、選ばれた車種は引き続き約3年の運用試験に向け約2,000両が発注される予定であった。

2013年10月の連邦政府閉鎖により一時的な停滞もあったが、その後は迅速に再開され、引き続き運用試験が進められた。

選定車種の決定

2014年、アメリカ軍による最終の入札募集が提示された。この入札はロッキード、AMゼネラル、オシュコシュが、今後総計55,000両のJLTVをアメリカ軍に納品する事になった場合の価格を提示するためのものであった。3社は2015年2月11日までに最終的な回答を行った。

2015年8月25日、オシュコシュ・コーポレーションの提案していたL-ATV(Light Combat Tactical All-Terrain Vehicle)がJLTVとして選定されたと伝えられた。第一弾の契約では初期量産分として約67.5億ドルの予算で17,000両のL-ATVが導入される予定である。

9月にはロッキード・マーティンが会計監査院に対し、決定に抗議する申し立てを行う事を示唆した。一方、AMゼネラルは、決定に異議申し立ては行わないと発表した。

要求仕様

JLTVの要求仕様には以下のような内容が含まれている。

機動性

戦術機動

兵站および戦略機動

生存性

採用国

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 - 53,582両を2018年度より調達開始。

この他、オーストラリアインドイスラエルイギリスがJLTV計画に関心を持っているとされている。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

出典

  1. ^ JLTV HMMWV replacement details and specifications
  2. ^ Capaccio, Anthony (2015年8月25日). “Oshkosh Wins $30 Billion U.S. Army Contract to Build Humvee Replacement”. Bloomberg. http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-08-25/oshkosh-wins-u-s-army-contract-on-30-billion-vehicle-program 
  3. ^ Oshkosh Beats Lockheed, AM General For Historic JLTV Win”. Breaking Defense. 2015年8月26日閲覧。
  4. ^ Andrew Feickert. “Joint Light Tactical Vehicle (JLTV): Background and Issues for Congress”. Congressional Research Service. 2015年3月19日閲覧。
  5. ^ Defense Markets Summary October 2007 - from www.Defense-Update.com
  6. ^ A Little LUV for the Future Military Jeep. Defense Tech
  7. ^ AM General and General Dynamics Announce Joint Venture Company. globalsecurity.org
  8. ^ TheStreet.com : Weak MRAP Order Wrecks Force Protection | Aerospace/Defense | CRDN FRPT NAVZ OSK
  9. ^ DRS Technologies, Force Protection team to compete for JLTV programme
  10. ^ secinfo.com
  11. ^ Lockheed Martin And Armor Holdings Announce Teaming Agreement For Joint Light Tactical Vehicles. globalsecurity.org
  12. ^ [1] Wired.com
  13. ^ Blackwater, Raytheon Pitch JLTV Candidate. Defense News
  14. ^ Kris Osborne (2009年2月17日). “GAO denies protest of Army JLTV award”. Army Times (Army Times Publishing Co.). http://www.armytimes.com/news/2009/02/defense_gao_jltv_021709/ 
  15. ^ JLTV Sinking, EFV Wobbly
  16. ^ a b http://images.dodbuzz.com/wp-content/uploads/2010/08/Army-Truck-Program-Report.pdf ARMY TRUCK PROGRAM (TACTICAL WHEELED VEHICLE ACQUISITION STRATEGY)
  17. ^ [2]. U.S. Army
  18. ^ Joint Light Tactical Vehicle: A Case Study
  19. ^ http://www.dodbuzz.com/2012/03/28/race-to-replace-humvee-keeps-growing/
  20. ^ a b tacom.army.mil

関連項目

外部リンク