『GUITARHYTHM』 | |||||
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布袋寅泰 の スタジオ・アルバム | |||||
リリース | |||||
録音 | ABBEY ROAD STUDIO studio 2 | ||||
ジャンル |
ロック デジタル・ロック ポップ・ロック インダストリアル | ||||
時間 | |||||
レーベル | 東芝EMI/イーストワールド | ||||
プロデュース |
布袋寅泰 ホッピー神山&布袋寅泰(6曲目のみ) | ||||
チャート最高順位 | |||||
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布袋寅泰 アルバム 年表 | |||||
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布袋寅泰関連のアルバム 年表 | |||||
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『GUITARHYTHM』収録のシングル | |||||
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BOØWY解散後、程なくして発売された布袋寅泰のファースト・ソロ・アルバム。
バンド時代の音楽性とは大きく異なり、コンピュータを大胆に取り入れたデジタル・ロックといった趣を見せており、「架空のサウンドトラック」をコンセプトに、それを意識した楽曲作りとアルバム構成が成されている[1]。
「GUITARHYTHM」とは、GUITAR(ギター)とRHYTHM(リズム)を組み合わせた布袋による造語。また、アルバムのタイトルに冠したシリーズ・プロジェクトの総称を指す。ちなみにこの言葉には「イズム=主義」という意味も含まれている[2][3]。
先行シングルがなく全曲が新曲。また全曲英語詞であり、これは海外進出を意識して制作された為である[4]。当時のインタビューでは、日本語と英語が混交した歌詞への違和感を口にし、また日本のリスナーに自身のボーカルがメインになることを望んでいない旨を述べており、総じて「音楽として聴いてほしい」とも語っている[5]。
布袋は本作について「アーティストといって胸をはって生きてる以上は、作るものがアートじゃなきゃいけない」「曲にしたって、詩にしたって、ジャケットのアートワークにしたって、すべてをアートにしたいと思った」と語っており、アルバムの制作に関して芸術性が強く意識されていた[6]。
作曲についてBOØWY解散直後のインタビューでは、基本的にBOØWY時代と変わらないと語っており[7]、当初はBOØWY風の楽曲も制作していた。しかし当時の妻である山下久美子や当時のマネージャーからBOØWYとの類似性を指摘された他[8]、バンド時代とは違う新たなスタイルを志したこと、土屋昌巳から「自分をコピーするようになったらお終い」とアドバイスされたことなどから「そういった楽曲は容赦なく切り捨てた」という[1]。
各プレスからの評価は軒並み好評であったが、一部では「BOØWYで得た印税を使いたい放題に使って作った贅沢なアルバム」とも評され、「当時これにはそれなりにショックを受けた」と布袋は語っている[9]。またイギリスでのプロモーションが成功しなかったこともあり、日本でのセールスは成功したものの最終的な商業面は赤字であったと後年布袋は述べている。
本作をリリースするに当たり、1988年6月に布袋は以下の一文を記している[2]。
「 |
《GUITAR+RHYTHM=GUITARHYTHM》 そろそろ90年代ロックンロールの幕開けというべきロックンロールを提示しなくてはいけない時期が来た。 |
」 |
このメモは作品の方向性に悩んでいた時に、布袋が自身の事務所にアルバムの方向性を提示したものを、プロモーション用に事務所側が使用したもので、その後コンセプトは更に変化していった[10]。
『“LAST GIGS”』から2ヶ月を経た1988年6月13日にロンドンへと渡り、制作が開始された[2]。
一部の楽曲でゲストミュージシャンを迎えてはいるが、基本的に布袋、プログラマーの藤井丈司、キーボーディストのホッピー神山の3人で制作されたアルバムである[4]。
デジタル要素の強い作品であるものの、当時はまだコンピュータ媒体が発展途上だったこともあり、ギターとコンピュータの一発録りに近い形でレコーディングは進められた。またレコーディングではプロデューサーとアーティストの両方を目一杯やったとのことで、「レコードを1枚作る重みを味わいたいと思った。BOØWYの時はグループだから、僕には僕の役割があり、それをやるだけで良かった。今回は1枚のレコードを作ることに、それこそジャケットひとつのことまでも、ドップリ浸かってドップリ終わるというのが最初の目標だった」と語っている[1]。
ビートルズが使用したことでも有名なロンドンのアビー・ロード・スタジオの第2スタジオにてレコーディングされた。海外レコーディングはホッピー神山の提案によるもので、アビー・ロード・スタジオの使用もビートルズファンのホッピーの意向であった[11]。レコーディングを終え帰国後、東京で改めて聴き直すとイギリスと日本の電圧の違いによる差異に違和感を覚え1からやり直したくなったが、数日したら違和感は無くなったという。
ギターテイクはアンプを一切使用せず、当時ではまだ珍しかったライン録りの手法でレコーディングされた[12]。さらにそのままの音ではなく、全ての音にノイズリダクションをはじめとした加工が成されている。
1988年10月5日に東芝EMIのイーストワールドレーベルよりLPレコード、カセットテープ、コンパクトディスクの3形態でリリースされた。
本作はイギリスでのリリース予定もあったが、先行シングルである12インチ「DANCING WITH THE MOONLIGHT」はリリース直後に廃盤となってしまった事から、アルバムリリースされる事はなかった[13]。
後に布袋作品を多数担当する永石勝が担当した。ジャケットワークを宇野亜喜良が手掛けている。
音楽雑誌「PATi-PATi ROCK'n'ROLL」1988年11月号(CBSソニー出版)に、布袋自ら1曲ごとにコピーとコンセプトを考案したビジュアルフォトが掲載された。
なおブックレットにて布袋が着用しているジャケットはヴィヴィアン・ウエストウッドが製作発表した当時の最新作である。
『GUITARHYTHM』の世界を具現化するものとして1988年10月26日に国立代々木競技場 第一体育館、11月15日に大阪城ホールにて初のソロコンサート『GUITARHYTHM LIVE』が行われた。『GUITARHYTHM LIVE』は、コンサートパンフレットと後述のミュージックビデオを含め、『GUITARHYTHM』のイメージを具体化する方法として重要なものとされていた。但し、コンサートパンフレットは製本ミスにより、コンサート当日には間に合わなかった[14]。ツアーは本数を減らして完璧にやりたいとの理由で行われていない。また映像と音のアートとして、映像作品化することも想定されていたが[5]、実現していない。
サポートメンバーには元BOØWYのベーシストである松井恒松、レコーディングにも参加したホッピー神山の他、土屋昌巳、池畑潤二、スティーヴ衛藤、藤井丈司[注釈 1]が参加した[15]。
布袋がコンサート前のインタビューで、ギグやライブではなくコンサートをやりたいと語っていた通り、見せ場の多い演出構成がなされていた[18]。布袋によると、1988年に初のソロコンサートが大失敗に終わる初夢を見たという。缶が飛んでくる程なので、かなりロックっぽいコンサートだったとも回想としているが[7]、実際のソロコンサートはロマンティックな内容だったと、複数の音楽ライターがレビューしている[18]。
オープニングアクトはドイツ出身のテクノポップバンド、THE PLANETSが務めた[17][注釈 2]。
コンサートは「LEGEND OF FUTURE」とともに、砂漠を彷徨う布袋モデルのギターを抱えたバラが、陽炎の先に見つけたワインを飲み干し、生気を取り戻すというアニメーション映像が流れた後[19][17]、アルバム未収録の「POWER」で開幕。「C'MON EVERYBODY」以下アルバム収録のナンバーが続いた後、7曲目の「WIND BLOWS INSIDE OF EYES」では白虎社のパフォーマンスが曲のイメージを盛り上げた[15][20]。続く8曲目の「LILITH」は、ゲストの山下久美子の作品で、山下自身が歌っている[17]。
10曲目、「DANCING WITH THE MOONLIGHT」ではギターを持たず、ボーカルのみのパフォーマンス[21][17]。「BEAT SWEET」、「MARIONETTE」、「BAD FEELING」とBOØWY時代のナンバーをギターでイントロのみ奏でた後、「DANCE CRAZE」では曲中にKC&ザ・サンシャイン・バンドの「THAT'S THE WAY(en)」を挟む構成で披露された[21][17]。12曲目はアルバムのタイトルナンバー。曲後半には布袋と土屋のギターバトルがあり、本コンサートのハイライトとなった[18][17]。「A DAY IN AUTUMN」で本編は終了。東京公演では布袋のギターソロから、大阪公演では布袋のピアノソロからバンド演奏へと展開していった[17]。
アンコール1曲目「GLORIOUS DAYS」は東京・大阪とも同じながら、2曲目は東京公演はピアノ(キーボード)演奏の「GUITARHYTHM」で終了し[21]、大阪公演では「A DAY IN AUTUMN」のピアノソロでコンサートの幕を引いている[17]。
代々木でのライブは無事に終了したものの、大阪公演で失態を犯したことを布袋は自伝に記している。ライブ前夜、バンドメンバーが呑みに繰り出す際「(ボーカリストで喉のコンディションがあるから)布袋は誘わない方がいいだろう」と気遣いを受ける。しかし布袋はこれに対して孤独感に苛まれ、初のボーカルへのプレッシャーも相まったことで朝まで深酒をした結果、立っていられないほどの二日酔い状態で会場入りすることとなり、まともなリハーサルも出来なかったという事態となった。ライブ自体は無事に終了したが、終演後の楽屋は重苦しい雰囲気に包まれていたという[22][3]。松井は布袋への配慮が失敗だったことや、リハーサルにならなかった一方で「それでもステージでは堂々とやりきっていたんだから、さすがだなと思った」と自伝にて述べている[23]。
現在まで単独のライブビデオとしての商品化はされていない。当時テレビ朝日系の音楽番組「HITS」で数曲がオンエアされた他、後にアルバム『GUITARHYTHM II』のアナログ版に数曲が収録された。ライブ映像が『HOTEI LIVE JUKEBOX』、『GUITARHYTHM BOX』それぞれに数曲ずつ収録されており、2012年に限定リリースされた『MEMORIAL SUPER BOX』にもライブの模様が一部収録されている。
# | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 時間 |
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1. | 「LEGEND OF FUTURE」 | Geoffrey Westley | Geoffrey Westley | ||
2. | 「C'MON EVERYBODY」 | Eddie Cochran・Jerry Capehart | Eddie Cochran・Jerry Capehart | 布袋寅泰 | |
3. | 「GLORIOUS DAYS」 | ハービー山口・Lenny Zakatek | 布袋寅泰 | 布袋寅泰 | |
4. | 「MATERIALS」 | ハービー山口・Lenny Zakatek | 布袋寅泰 | 布袋寅泰 | |
5. | 「DANCING WITH THE MOONLIGHT」 | ハービー山口・Lenny Zakatek | 布袋寅泰 | 布袋寅泰 | |
6. | 「WIND BLOWS INSIDE OF EYES」 | 布袋寅泰 | 布袋寅泰・ホッピー神山・藤井丈司 | 布袋寅泰・ホッピー神山・藤井丈司 | |
7. | 「WAITING FOR YOU」 | ハービー山口、Lenny Zakatek | 布袋寅泰 | 布袋寅泰 | |
8. | 「STRANGE VOICE」 | ハービー山口・Lenny Zakatek | 布袋寅泰 | 布袋寅泰 | |
9. | 「CLIMB」 | ハービー山口・Lenny Zakatek | 布袋寅泰 | 布袋寅泰 | |
10. | 「GUITARHYTHM」 | ハービー山口・Lenny Zakatek | 布袋寅泰 | 布袋寅泰 | |
11. | 「A DAY IN AUTUMN」 | ハービー山口 | 布袋寅泰・Geoffrey Westley | Geoffrey Westley | |
合計時間: |
No. | 日付 | レーベル | 規格 | 規格品番 | 最高順位 | 備考 |
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1 | 1988年10月5日 | 東芝EMI/イーストワールド | LP CT CD |
RT28-5305 ZT28-5305 CT32-5305 |
2位 | |
2 | 2000年12月13日 | 東芝EMI/アストロノーツスター | CD | AJCH-30001 | - | デジタルリマスタリング盤 |
3 | 2008年12月24日 | EMIミュージック・ジャパン/ヴァージン | SHM-CD | TOCT-95001 | 52位 | 2000年デジタルリマスタリング盤、紙ジャケット仕様、『GUITARHYTHM BOX』でのリリース。 歌詞の和訳が未掲載。 |
4 | 2014年12月10日 | ユニバーサル・ミュージック/ヴァージン | SHM-CD | UPCY-6954 | - | 2000年デジタルリマスタリング盤 |
『GUITARHYTHM』 | |||||
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布袋寅泰 の VHS | |||||
リリース | |||||
ジャンル | ロック、J-POP | ||||
レーベル | 東芝EMI | ||||
布袋寅泰 映像作品 年表 | |||||
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布袋寅泰関連の映像作品 年表 | |||||
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1989年1月11日、VHSビデオにて同タイトルの映像作品がリリースされた。内容は本アルバムの全楽曲を映像化したもので、音源もほぼそのまま収録。監督は永石勝で、カバーアートはGUITARHYTHM LIVEでも着用したサイバーパンク風衣装の写真。
多くの楽曲で、アニメーションが導入されている。アニメ制作はBOØWY時代の「Marionette」のミュージック・ビデオに続き、ガイナックスが担当。アニメパートの監督は前田真宏で、アニメーターには摩砂雪も名を連ねる。
一部楽曲ではアナグリフによる立体視が導入され、パッケージには赤と青のカラーフィルタ付き眼鏡が同梱されているほか、映像の冒頭にアナグリフ用の色調整パターンを表示。また全編で擬似的な立体音響「Bio・Phonics」が導入され、同じく冒頭に聴き方の説明映像が流れる。
同年2月22日にはレーザーディスク版が発売。2001年6月20日、DVD版発売。2020年10月5日、立体視映像の「WAITING FOR YOU」「STRANGE VOICE」を除く全楽曲が、布袋のYouTube公式チャンネルにて無料公開された。
冒頭に、舞台の幕が上がるアニメーションと、オーケストラの練習のような音が流れる。
最後に「GUITARHYTHM」のピアノ・バージョン(アルバム未収録)と共にエンドロールが流れ、舞台が閉幕するアニメーションで終わる。