Vz 61 スコーピオン | |
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種類 | 軍用短機関銃 |
製造国 | チェコスロバキア |
設計・製造 | チェスカー・ズブロヨフカ国営会社 |
年代 | 1961年- |
仕様 | |
種別 | 短機関銃 |
口径 | 7.65mm |
銃身長 | 112mm |
使用弾薬 | .32ACP弾(7.65x17mm弾) |
装弾数 | 10・20・30発 |
作動方式 | シンプルブローバック・クローズドボルト |
全長 | 270mm(517mm) |
重量 | 1,280g |
発射速度 | 750-850発/分 |
銃口初速 | 317m/s |
歴史 | |
設計年 | 1961年 |
Vz 61、別名「スコーピオン(SCORPION)」は、チェコスロバキアのチェスカー・ズブロヨフカ国営会社(チェコ兵器廠国営会社、チェコ語: Česká zbrojovka, n.p.:ČZ、1992年に民営化)で開発された短機関銃である。
Vz 61とは、チェコ語で"Vzor 61"(61年式)の略で、正式名称はSamopal vzor 61(61年式短機関銃)と言う。チェコスロバキア軍にて1961年に制式採用された事に由来する。
冷戦時代に戦車兵や軍用トラック操縦士、通信兵などの自衛・護身用サブマシンガンとして、またCz-447の後継として、銃器開発に実績のあるČZ社が開発した。 「スコーピオン」の愛称は、銃床を折り畳む際、前方に持ち上げて回転させる様子が、尾を振り上げる蠍(さそり)の姿を連想させる事に因む。
銃床を畳んだ状態の全長27cmはサブマシンガンとして最小クラス、銃身6-7インチの.45口径拳銃と同程度で、旅行用洗面用具入れにも似た専用ポーチや、携帯専用ホルスターに収めることができる。
小型ながら様々な工夫がされており、上方に回転して銃上部に固定される銃床、フロントサイトカバーを銃床固定具と兼用する構造、発射時に握りこむ事でフォアグリップ(前部固定補助グリップ)代わりにできる堅固に固定された弾倉のほか、ボルトの連射速度を変更できる機能(レートリデューサー)などを特徴とする。
レートリデューサーはレシーバー後端に内蔵されたフックと、グリップに内蔵されたプランジャーユニットから構成される。プランジャーユニットの主要な部品は軽量なプランジャー、プランジャーばね、重いカウンターウェイトである。連射モードの際、射撃にともなって後退したボルトはフックに捕捉されると同時に、プランジャーをグリップ内へ突き下げる。下降したプランジャーはばね圧を受けて再上昇し、遅れて下降してきたカウンターウェイトを受け止め、さらに上昇してフックを解除してボルトをリリースする。プランジャーのばね圧力を調節するとプランジャーの作動速度が変化するため、連射中のボルトがフックに拘束される時間を変更できる。
左側グリップ上に配置されたセレクターは、「0」の刻印があるセーフティー位置を中間に、前に押して「20」の刻印に合わせるとフルオート連射、後ろに引いて「1」の刻印に合わせると単発のセミオート射撃となる。この配置はČZ社製アサルトライフルVz 58の影響を受けており、Vz 58では右側にあった物を左側に置き換えた事で、右手親指で操作できるようになっている。
前部照準器はレシーバー先端の上面にねじ込まれて、左右を前述のサイトカバーによって保護されている。棒状の照星は偏芯しているため、ねじを回すことで左右の微調整が可能である。後部照準器はL字形状で、75メートルと150メートルの二段階で切り替えることができる。銃床を畳んだ状態でも、照準器を通した視線は阻害されない。
使用弾薬の.32ACP弾は、9x19mmパラベラム弾に比べると若干非力ではあるが、小型化でき、フルオートでもコントロールし易い。後に.380ACP弾モデルのVz 64や、9x18mmマカロフ弾モデルのVz 65も登場する。.32ACP弾の威力を疑問視する意見が出た事から、9mmパラベラム弾仕様のVz 68も開発された。
前述のように戦車兵の護身用として開発された銃ではあるが、その利便性からソ連のKGBや特殊部隊スペツナズ[要出典]、また、共産系テロリストなどにも愛用された。西側でも脅威とみなされ、実際に、イタリアのアルド・モーロ元首相は「赤い旅団」構成員によりスコーピオンで殺害されている。また、北朝鮮の工作員が使用しているといわれる。近年ではイギリスやスウェーデンなどヨーロッパのストリートギャングにも流出している。
チェコが西側と関係を持つようになってからは西側でも人気を博し、警察での採用例もある。アメリカでは法規制の関係もあり、フルオート機能が排除されたセミオートピストルモデルも販売されている。
チェコスロバキア国内での生産は1975年に一度終了したが、ユーゴスラビアではライセンス生産が続けられている。また、1989年のチェコスロバキア解体により国営工場だったČZ社は民営化、銃器市場へ商品展開する一方、小型軽量なVz 61は近年多発する対テロ戦術やCQBに有用であるとして、各種改良を施したVz 61、Vz 82(旧Vz 65)、Vz 83(旧Vz 64)、Vz 85(旧Vz 68)を再生産している。
現在、チェコではNATO加盟で使用弾薬を9mmパラベラム弾に統一する動きが進んでおり、Vz 85が使用されているが、チェコの特殊部隊はドイツH&KのMP5やMP7A1を使用している。IDET2009(チェコのディフェンス・ショー)でCZ社は、Vz 61に代わる次世代サブマシンガンとしてスコーピオン EVO3を発表した。
東ドイツの秘密警察、シュタージが、本銃をブリーフケースの中に仕込んだ物を少数生産していた。同様の運用例は同時期の西ドイツのH&K MP5にも存在するが、東ドイツの場合は消音器が取り付けられていることなどから、要人の身辺警備などでは無く暗殺を目的とした物であったと推察される[2]。