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種類 | 株式会社 |
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市場情報 | |
本社所在地 |
![]() 〒105-0014 東京都港区芝2-7-17 住友芝公園ビル10F |
設立 | 2010年9月10日 |
業種 | サービス業 |
法人番号 | 3030003001527 |
事業内容 | 航空宇宙産業 |
代表者 | 代表取締役 袴田武史 |
資本金 | 1000万円 |
純利益 | ▲16億1466万4000円(2020年03月31日時点)[1] |
総資産 | 70億6487万8000円(2020年03月31日時点)[1] |
主要株主 |
袴田武史(19.12%) 株式会社INCJ(9.75%) インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合(9.55%) 小沼美和(7.82%) 株式会社日本政策投資銀行(5.57%) IF Growth Opportunity FundⅠ, L.P.(3.40%) 中村貴裕(3.19%) 株式会社TBSホールディングス(2.79%) IF SPV1号投資事業組合(1.87%) 株式会社SMBC信託銀行(1.87%) 吉田和哉(1.59%) ICJ1号ファンド投資事業有限責任組合(1.59%) 株式会社日ノ樹(1.43%) 清水建設株式会社(1.39%) 株式会社電通グループ(1.39%) コニカミノルタ株式会社(1.39%) スズキ株式会社(1.39%) スパークス・グループ株式会社(1.39%) |
関係する人物 |
袴田武史(創業者) 吉田和哉(初代CTO・主要株主) 中田華寿子(取締役) |
外部リンク |
ispace-inc |
民間による月面探査を目指し、2010年9月にispaceの前身となる組織である合同会社ホワイトレーベルスペース・ジャパン(2013年5月にispaceとして会社化)が設立された[2][3]。2013年1月30日、活動拠点をオランダから日本に移転。この変更にはSteve Allenから日本で運営を主導していた袴田武史に主導権が移る事も含まれた[4][5]。同年7月15日、月面探査チームの公式名をHAKUTO(ハクト)に変更した[6]。
月面無人探査レース「Google Lunar XPRIZE」にHAKUTOで挑戦し、XPRIZEの終了後には昆虫型ロボットによる地球近傍天体での資源探査も目指している。
ispaceの前身、ホワイトレーベルスペース・ジャパンの誕生に至った契機として、2007年にピーター・ディアマンディスが月面での賞金レースGoogle Lunar X Prize (GLXP) を発表したことが挙げられる(なお同様の経緯で企業化したものには他に米国のAstrobotic社がある。)。2010年12月31日にGLXPの参加登録が締め切られた時点ではレースに日本を拠点とするチームは参加していなかったものの、東北大学教授の吉田和哉の宇宙ロボット研究室がオランダを拠点とするチーム「ホワイトレーベルスペース」に加わっていた。メディア業界で活動していたスティーブ・アレンが代表を務めるこのチームは[7]、開発拠点が欧州と日本に分かれており、欧州側が月着陸機、日本側が月面車 (ローバー) の開発を行うこととなっていた。後にispaceの代表取締役となる袴田武史は、2010年1月にホワイトレーベルスペースが日本で開催したイベントの運営に携わり、その際吉田和哉と出会った[8]。袴田は日本側での月面車の開発資金調達や広報活動を行うため、2010年に合同会社ホワイトレーベルスペース・ジャパンを創設し、吉田和哉はCTOに就任した。日本ではホワイトレーベルスペース・ジャパンが資金の確保を目指していた一方、欧州では2012年ごろには資金不足により開発が行き詰まりつつあった。そしていよいよレースから撤退することを決め、2013年1月30日にチームの拠点は欧州から日本へ移すことが発表された。代表はスティーブ・アレンから袴田に交代したが、この段階ではまだチーム名はホワイトレーベルスペースのままだった[9]。
2013年5月、ホワイトレーベルスペース・ジャパンは組織変更を行い、株式会社ispaceが創立された。同年7月16日、ispaceが運営するGLXPのチーム名が白兎にちなむ「HAKUTO」に変更された。2015年1月26日、HAKUTOはGLXPの中間賞を受賞し、賞金50万ドルを取得した[8]。HAKUTOは月面車の開発に特化し、月面への到達に必要な着陸機は自前では開発せず、GLXPに参加する他のチームの着陸機に有償で乗せてもらうという作戦を取った。レース終盤にはインドのチームインダスの着陸機に相乗りすることになったものの、2018年1月、チームインダスは資金不足により地球からの打ち上げに使うロケットの調達を断念した。GLXPは2018年3月に終了し、HAKUTOは同月31日、挑戦を終了することを発表した。
2017年3月2日、ispaceはルクセンブルク政府との間で月の資源開発に関する覚書を締結し、同年には初の海外拠点となるispace Europe SAがルクセンブルクに設立された[10]。
それまで月面車の開発に注力していたispaceだったが、袴田と当時のispace最高執行責任者中村貴裕はインキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹から今後はGLXP終了後を見据えてispaceが自ら月着陸機を開発することを提案された[11]。それが契機となり、2017年12月13日、ispaceは独自の月着陸機「シリーズ1」を開発することを発表。2019年末頃のミッション1でまず月周回を行い、2020年末頃にミッション2で月着陸と月面車による月探査を行うとしていた。同時にispaceは当時国内のスタートアップ企業では最高額となる101.5億円のシリーズA資金調達を実施。またこの時同社のムーンバレー構想が公表された。2018年9月26日にispaceは最初の月探査プログラムを「HAKUTO-R」と命名することを発表。同時に米国のスペースX社と2回分の打ち上げ契約を締結したことも明らかになった。
2018年10月9日、ispaceは米国のチャールズ・スターク・ドレイパー研究所と共同でNASAへ商業月面輸送サービス (CLPS) の公募へ月着陸機「アルテミス7」の提案を行った[12]。アルテミス7はHAKUTO-Rで使われる月着陸機を米国で組み立てたものである[注 1]。ispaceとドレイパー研究所は2026年までの中長期のパートナー契約を結んでいる[13]。11月29日、NASAはCLPSへ参加する資格を有する企業9社のうち一つとしてドレイパー研究所を選定した。
2019年8月22日、ispaceはHAKUTO-Rのミッション内容の変更を発表した。月着陸は前倒しで2021年にミッション1で実施、ミッション2は2023年に着陸と月面車による月探査を実施することとした。2020年12月4日、NASAは月面で資源を採取し、それをNASAへ譲渡 (販売) する資格を有する企業としてispace(本社)、子会社ispace Europeを含む4社を選定した[14]。計画ではまずispaceがミッション1の着陸機で月のレゴリスを採取し、続いてミッション2でispace Europeが月面車でレゴリスの採取を行う[15][16][17]。また2021年5月27日にはカナダ宇宙庁 (CSA) から開発資金を得たカナダの企業3社[18]がそれぞれ月への輸送・データ供与をispaceに委託した[19]。
2020年11月9日、米国コロラド州デンバーにカイル・アシエルノCEO率いるispace technologies, U.S. , inc.の拠点が設立された[20]。2021年8月24日、ispaceは従来よりも大型の月着陸機構想を発表(のちのAPEX 1.0)。この着陸機の設計・製造は米国国内で行われる[21]。
2022年7月25日、NASAはCLPS初の月の裏側への貨物輸送ミッションをドレイパー研究所に発注した[22]。当初ispaceはこのミッションで使われる着陸機として「シリーズ2」を発表していたが、2023年9月28日に新たなデザインの着陸機「APEX 1.0」を公開した[23]。
ispaceの最初の2回の月探査ミッションはHAKUTO-Rというプログラムを構成している。HAKUTO-Rでは地球から月面への輸送技術の実証などが行われる。「R」にはReboot (再起動) の意味が込められている[24]。最初に行われるHAKUTO-R ミッション1 (M1) は、アラブ首長国連邦の月面車ラシッドなどを載せ[25]、2022年12月に打ち上げられた[26]。
M1は宇宙空間を4カ月半航行して2023年4月26日に月に到着、民間企業として世界初の月面着陸を目指したが、月面への軟着陸に失敗。ランダーとの通信が途絶えた[27]。
2022年現在、HAKUTO-R ミッション2 (M2) の打ち上げは2024年に予定されている。このミッションではispace Europeが開発した月面車による月探査が行われる。また月の縦穴の探査も検討されている[24]。
2023年、「HAKUTO-R」の打ち上げを2024年冬頃に行うと発表。ソフトウェアの改良などを行った次回の月着陸船の名称を「再起」や「復活」の意味を込めた「RESILIENCE」としたと発表した。[28]
2024年1月20日にJAXAのSLIMが、そして同年2月22日にインテュイティブ・マシーンズのNova-Cが月面着陸に成功したことで、日本初、そして民間企業による世界初の月面着陸成功の称号は譲ることとなった。HAKUTO-R ミッション1失敗の原因に、「世界初」の功を急ぐブラックな企業体質を指摘する見解もある[29]。
ispaceの三番目のミッションは月の裏側へ着陸を行う。このミッションはドレイパー研究所が主導しており[22]、ispaceは月着陸機の設計を行う。月の裏側では地球と直接通信することができないため、着陸機と一緒に2機の通信衛星が打ち上げられ、これらは月周回軌道へ投入される[30]。2023年9月現在、このミッションは2026年の打ち上げが予定されている[23]。
数年以内に月へ送られる見込みの各ミッションの他に、ispaceは将来を見据えたさまざまな技術の研究開発を行っている。