HP-IL (Hewlett-Packard Interface Loop、ヒューレット・パッカード・インターフェース・ループ)は、ヒューレット・パッカード(HP)が1980年代初期[1]に販売開始した短距離接続用のバスあるいはネットワークである。HP-ILを用いることにより、プリンター、フロッピーディスクドライブ、磁気テープリーダー等をHP-41C、HP-71B、HP-75C/D等のプログラム電卓や80シリーズ、HP-110等のコンピュータに接続することが可能である。
HP-ILは、その名前が示す通り、HP-IL専用のケーブルがループを形成する。例えばHP-41Cの場合、HP-ILインターフェースモジュールから出たケーブルは、全ての接続されたデバイスを経由し、インターフェースモジュールに戻る。バス上の全てのデバイスは、内蔵型あるいはケーブル型のリングイン及びリングアウトの二つのコネクタを持つ。HPは専売の極性がありD字形の殻を持つよう設計された2ピン式コネクタを使用した。HP-ILケーブルは、延長するために余分のアダプタを使わずに接続可能である。
インターフェースループでは、媒体アクセス制御にトークン・パッシングプロトコルを採用している。ループ上の各デバイスは、1から順に自動的に割り当てられた最大30までの連番アドレスを受信し、その連番アドレスによって識別される。バス上のデバイスは、コントローラー(電卓又はコンピュータ)あるいはスレーブ(周辺機器)としての役割を行うことができる。
その上、HP-71B用インターフェースモジュール、HP82973A ISAインターフェースカードなど幾つかのコントローラーは、スレーブとしての役割も行うことができ、電卓による小規模ネットワークを構成することができる。 例えば、複数のHP-71BとHP 82402A Dual HP-ILアダプタを用いると、別々の場所でHP-71Bが一つ目のインターフェースループを通して各種の計測機器などを管理し、それぞれのHP-71Bを二つ目のインターフェースループを通してスーパーバイザとなるコンピュータが管理する…という二段階ネットワーク構造を構築することが可能である。[2]
ループ上では、常に、一台のトーカー、一台のリスナー及び一台のコントローラーのデバイスが存在し、他のデバイスは非アクティブである。トーカーは、ループに対して情報を送信するデバイスであり、リスナーはループから情報を受け取るデバイスである。コントローラーは、トーカー及びリスナーを指揮するデバイスである。電卓を基にしたシステム(例えば、HP-41Cを使用したもの)では、電卓は常にアクティブなコントローラーであり、情報を送受信する際にはトーカー又はリスナーを兼ねる。
HP-ILのデータ転送速度は、理論上は160kbpsまででることになっているが、実効速度は16kbpsが限界である。[3]